レーザー加工機ガイド - 選定の壺

YAGレーザー

YAG(ヤグ)レーザーとは固体レーザーの一種で波長1064nmの赤外領域のレーザー光であり、様々な用途に幅広く利用されています。「YAG」とはイットリウム(Y)とアルミニウム(Al)の複合酸化物から成るガーネット構造の結晶のことです。それぞれの頭文字を取ってYAG結晶と呼ばれ、それを媒体として発振されるレーザーをYAGレーザーと呼んでいます。実際に使われているレーザー発振用の結晶は、結晶構造内のイットリウム(Y)のうち数%をネオジム(Nd)で置き換えたものを用いており、それを「Nd:YAGレーザー」と呼んでいます。


Nd:YAG結晶の他にNd:YVO4結晶が用いられることもあります。それはYVO4レーザーと呼ばれ、発振するレーザーの波長は1064nmでYAGレーザーと同等です。YVO4とはイットリウム・バナデート結晶のことで、結晶構造内のイットリウム(Y)のうち数%をネオジム(Nd)で置き換えたものが「Nd:YVO4」結晶となります。


さらにNd:YLF結晶(ネオジウムイルフ結晶)が使われる場合もあります。温度特性があまり無いため熱レンズ効果が起こりにくいという利点があります。発振するレーザーの波長はYAGレーザーとは少々異なり、1053nmです。


また、波長1064nmのYAGレーザーは「基本波」と呼ばれ、この基本波を整数倍に分割することでビーム特性を変え、基本波では不可能な加工を可能にすることができます。しかし、波長が短くなればなるほど波長変換のために出力は落ち、価格が高くなります。


YAG基本波(波長1064nm)について

最も普及しているため安価であり、数キロワットの高出力のものもリリースされています。赤外波長領域のレーザーであり、ビームを目で確認することはできません。基本的に加工の際に熱影響が強く出ますが、数ナノ秒やピコ秒のパルス幅のレーザーも出ており、それらの短パルスのレーザーを使えば熱影響は少なくなります。得意な材質は、鉄、SUS、アルミ、チタン、アルミナ、シリコン、カーボン等。苦手な材質は、ガラス、紙、アクリル、PET材、銅、金等。


YAG第2高調波(波長532nm)について

YAG基本波を2分の1の波長に変換したものです。可視波長領域のレーザーであり、ビームの色が緑色であることから「グリーンレーザー」とも呼ばれています。近年は数十ワットの高出力のものもリリースされており、ビーム出力も安定してきました。得意な材質は、鉄、SUS、アルミ、チタン、アルミナ、シリコン、また基本波では苦手だった銅、金等も加工できます。苦手な材質は、ガラス、紙、アクリル、PET材等。


YAG第3高調波(波長355nm)について

YAG基本波を3分の1の波長に変換したものです。紫外波長領域のレーザーであり、ビームを目で確認することはできません。紫外波長領域のレーザーになるとどんな材料でも吸収率が高くなるために加工できるようになるのが特徴です。


YAG第4高調波(波長266nm)について

YAG基本波を4分の1の波長に変換したものです。紫外波長領域のレーザーであり、ビームを目で確認することはできません。どんな材料も加工でき、熱影響のほとんど無い微細な加工が可能ですが、取扱が非常に難しくなります。


YAG第5高調波(波長213nm)について

YAG基本波を5分の1の波長に変換したものです。紫外波長領域のレーザーであり、ビームを目で確認することはできません。現在はまだ研究段階であり、市場には出回っていないようです。



メーカー

コヒレント・ジャパン株式会社
米国COHERENT社のYAG基本波〜第4高調波のレーザーを販売。


スペクトラフィジックス株式会社
米国Spectra-Physics社のYAG基本波〜第4高調波のレーザーを販売。


浜松ホトニクス株式会社
ミクロンオーダーの高品質な微細加工用途に最適なピコ秒レーザーを販売。


株式会社ブイ・テクノロジー
フラットパネルディスプレイ(FPD)の製造工程における検査・測定・リペア装置をメインに扱っている会社だが、レーザー発振機単体でも販売している。主にリペア装置用。


株式会社メガオプト
レーザーに関する相談やサンプル加工、特殊なレーザー発振機開発も取扱。産業用パルスグリーンレーザーのデモ機貸し出しも行っています。


サイバーレーザー株式会社
サイバーレーザーは日本のレーザーメーカー。YAG第2高調波〜第4高調波のレーザーを販売。


株式会社片岡製作所
片岡製作所は日本のレーザーメーカー。YAG基本波〜第3高調波のレーザーを販売。


スペクトロニクス株式会社
薄膜型太陽電池のスクライビングに最適化したレーザー発振機を販売。



商社・販売代理店

カンタムエレクトロニクス株式会社
フォトンエナジー社(ドイツ)、ブライトソリューション社(イタリア)、Quantel社(アメリカ)のYAGレーザー発振機を販売。


株式会社日本レーザー
Powerlase社(イギリス)、クリラス社(ドイツ)、Lee Laser社(アメリカ)、DPSS Lasers社(アメリカ)、Quantel社(フランス)などのレーザー発振機を販売。波長域は基本波から第5高調波まで取扱。


レイチャーシステムズ株式会社
Litron Lasers(リトロンレーザー:イギリス)社製レーザーを取扱。



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